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命 文豪ストレイドッグス

(若干、過激表現がありますーー)

私こと太宰治ラグエル・ハンという男に全てをはぎ取られてしまった。

 この学者は私に「贖罪」をさせると言って自分の体液を私に入れ、感染させた。

そうして、彼は自分の研究室に、途中拾った中原中也と敦くんも連れて来た。

敦くんは何にも知らない。

研究室にはいろんな整備がされていた。数々のシリンダー、研磨機?粉砕機?らしきものがあり、助手がいそいそと働いている。

 広さは探偵事務所の2倍はある。 助手たちはラグエルが帰って来ると緊張して、研究にいそしんだ。するとラグエルは大声で彼らを叱責した。

「君たち新しい鉱石の組成式の計算をしておいてって言ってたのに、そのための研磨をしてないの!!」

すごい大声だ。あのおちゃらけ学者の姿と思えない。

「キミは鉱石をギョウザの皮にするつもりかい???どいて!!ボクがやる!!君たちは大学に何しに来てるの???ボクの研究室に遊びに来てるの???」

そして。

「この人たちが被験者になるかもしれないんだよ!!一人は感染してる!下手したら死ぬかもしれないんだよ!!」

「す・・・すみません・・ハン博士」

「いいから、どいて!!ボクが見るから!!」

彼はそういうと白衣をはおり、助手から鉱石をひったくり、研磨機にかけた。

ウィーーンという機械音が鳴り響き、彼は石を研磨機にセットして削って行った。

「すみません・・・・驚いたでしょう・・・今日のはまだ優しいほうなんです。僕はもう慣れました。憧れていたハン博士の元で研究できるんなんて夢のようなんです。あの人はあのハーバード大学がよだれを垂らして欲しがる方なんですよ」

その説明を聞きながらその助手がコーヒーを入れてくれた。

「ごたくを言う暇があったら、組成式の計算でもしてなさい!!」

まるで鬼だ。

彼の手の中の石はみるみる形を変えて、0,1ミリ単位で削られて行くと言う。

それを裏付けるように真剣そのものの顔で自分のメガネを光らせながら、透過(透けて見えること)可能な形にした。

この形は世界で彼しかできないようだ。

1ミリでも狂うと、成分の全貌が明らかにならないという。

「これでよし」

そうしてボードに何やら計算みたいなのをマーカーで書いた。

「この水晶体は・・・・H2Oの欠けたピネウマだ。普通の鉱石・・・・。新しいものと思っていたのに・・・。

すると、腕をまくり近くにあった沸騰している溶液をかけた。

「ああ!何てことを!」

敦くんが叫んだ・

何をしているんだ???

これはこの間見つけたピネウマ。砕いて沸騰させたのさ。ボクのここの腕だけは痛みを感じる。人間に痛みを感じさせずかつ毛穴からの浸透が可能か、実験してるのさ・・・・・あああ!!!」

やめろ・・・・

「やめて下さい!!ラグエルさん!」

敦くんが叫んだ。

「黙れ!!誰びとたりとも邪魔はさせない!あっちに行ってなさい!!」

痛みに耐える苦痛の顔が美しいと思ったのは、中也も同じようだった。

「まるで鬼神だよ・・・ここまでやるのか?」

その声が聞こえたのか・・。

「僕はマウスは使わない!!かわいそうで、見てられないからだ!!命を粗末にする奴は僕は許さない!せっかくこの世に生まれて来たのにキミらはそれを破壊してきたんだ!!

キミらは永遠に生きて罪を償うべきだ!! 何がマフィアだ!!それがかっこいいのかい??!!

 ただの人殺しの集団じゃない・・・く!」

ラグエルの咆哮に私の胸は張り裂けそうになった。

そうして、素直に自分の犯して来た罪に向き合おうと思った。

「ダメだ・・・・」

腕はやけどでただれたままだ。助手が治癒の水溶液をかけた。そうして、そこを包帯で卷いた。

「君はいつもこんなことをしているのか?」

私はうわずった声で言った。

「当たり前だよ・・。僕は本気だ。僕が発見したピネウマはこの地球を救う。命を救う。

人の心を変える・・。僕は本気でこの世の中から全ての悪を断ち切るつもりだ。

だから太宰さん、キミに感染させた。 中也さんも感染者になって、罪を抗うべきだ!!

 敦くんのような心を取り戻すんだ」

彼は敦くんを抱きかかえ。

「いい?よく聞きなさい。私はキミのことを調べた。孤児院を追い出され、悪党どもと闘って来た。 キミは素晴らしい子だよ。」

「僕が・・?芥川は僕がいるだけで回りの人間が死ぬって・・」

「悪党の言うことなんかに耳を傾けたらだけだよ。それは詭弁だ。殺戮を正当化するためのウソなんだよ・・・・。キミがいるだけで周りの人は幸せになる。死んだりしないよ」

敦くんの頬に涙が流れている・・。

そうだ・・なぜ私はこんな言葉を彼に云ってあげれなかったのだろう・・」

ラグエルは敦くんを抱きしめて。

「キミは人を幸せにするために生まれて来た。誰も死んだりしない。げんにあの女の子も助かったじゃないのさ、キミのおかげで・・。虎に変身したっていいじゃないのさ。何でキミが虎になっちゃうかわかる?」

「わかりません」

「キミの悲しみがあまりに大きすぎたから。だから虎になっちゃっても、優しい虎になるよ、僕がならしてあげる・・名前もつけてあげるよ・・・いいかい?」

「はい」

「キミには生きる権利がある。人に奉仕する義務が有る。そのために太宰さんも中也さんもその異能力を使うべきだ。」

「じゃ・・・私に感染させたのは・・」

「幸せ物質のあるピネウマだよ。真に幸せな人は人を傷つけたりしない・・。わかった?敦くん、悪人の言うことなんか聞かないで、信じちゃダメだよ。ボクの今言ってることを信じて、・・・僕にはキミが必要なんだよ」

敦くんはヒックヒック嗚咽をこらえ・・

「僕は・・ホントに生きてていいんですね」

「この世に生まれて来た人は誰でも幸せになる権利が有るのさ、とくに苦しい思いをしたひとはその分もっと幸せにならなきゃだめだ。 どこにもいくところがなくなったら、ボクのところに来なさい。 いつでも歓迎するから・・・

いい?絶対に自分を卑下したらダメだよ・・いじめたらダメだ・・わかった?これがボクのキミへの講義」

ラグエルが敦くんを連れて来た意味がようやくわかった・・。

やはり私は人間失格だ・・・。彼の心の痛みを知っていたのに、言葉にしなかった。

敦くんはオウオウ泣いて、ラグエルに抱きついた。

「あなたに会うために今まで生きてた気がします・・・ありがとうございます・・」

(作者より。ーーーー私はこの言葉をどうしても敦くんに言いたかったです。虎の力で鏡花ちゃんを救っても私はこの言葉をかけたかった。生きてていいんだよって。生きる意味を漫画にするなら、こういう場面が必要だと思います。 ダサく感じるから? 売れたいから?

大勢の人の心も動かす。マトモな言葉が必要だと思います、私も言葉で救われた一人だからそう言えます。)

私こと太宰治は後方の痛みが和らいで行くのを感じた。

さっきのアレは一体なんだったんだろう?・・そういうギャップを忘れてしまうほど感動した。 ホントに平和は訪れるのだろうか?

「今日は満月だね。」

ラグエルは一言いうと大学の屋上に中也と敦くんを連れて行った。

「何で俺も行かなきゃなんねーんだよこのヘボ学者」

「いいからいいから中也さん」

研究室から出るとラグエルがいつものヘラヘラした声で話してる。

私は一人研究室に残った。

助手がおかわりのコーヒーを持って来た。

「ハン博士はああいう方なんですよ。だからみんなついて行くんです。でもああいう天才的頭脳を持っているのに、未だに講師なんですよ」

「講師???」

ハーバード大学では名誉教授にしたいってしょっちゅう電話があるのに、まるで興味なし、ケンブリッジ大学も出てるのに・・・・日本の大学はいかに上意下達おわかりでしょう?」

私はそういうものをたくさん見て来た。

見すぎて来た。

それが真実だと思っていた。あのラグエルという学者は一度もあのヘボ理想家の好きなことを言わなかった。「理想手帳」を持ってる男のことだ。

幸せ・・・

そういう言葉を連呼した。私はどうせ死ねない身体になってしまった。

それは自分に、この世に絶望したから・・。

でも、まだ自分にできることがあるなら、あいつと一緒に居ても悪くないかも・・。

入水がただの水泳になっても。

ラグエル、敦、中也は屋上へ行った。

丸い大きな満月が出てる。

「やめてください!!虎になってしまう!!」

敦が叫んだ。

「大丈夫、キミは虎にならない」

「おい、ヘボ学者。いったい何でココにくるっつってんだろーが」

「中也さん・・敦くん・・ボクはね。化け物なの」

「?????」

「さっき、命がどうのこうのって言ってたけど、ボクは大勢の人を殺して来た」

「??え?」

「今にわかるよ」

満月の光がラグエルを照らした。

すると、彼の髪は毛先から紫色になっていった。

山高帽をとり、髪を結わえている紐をほどき・・・。

「あ!!」

中也が叫んだ・

紫色の髪が光ってて、宝石のような瞳が輝いている。

全てを慈しむ天使のように彼らを見ていた。

毛穴など一つもない、陶磁器のような肌。まばたく度にダイヤのような粒がはねる。

ギリシャ神話のような顔立ち。

少女のような無垢な唇。

それより何より愛に溢れた眼差しで二人を見ている。

愛しいものを見るように。

敦は彼を見て腰を抜かした。

「ボクは・・・こんな綺麗な人を見たことがない・・・まるで宝石」

「ボクは満月になったらこんなおぞましいすがたになるのさ。そうしてこの姿を一度でも見たらボクのことばかり考えてしまう。 そして少しでもそっけない態度をとると悲観して自ら命を絶つのさ・・・・・・・中也くん・・。ボクが自殺させてしまった人間はキミが殺した数なんかよりはるかに多いのさ」

それは勝手に死んだ人間が悪い・・・敦はそう言おうとした。でも言葉が出ない。

考えて見たらいい、いきなり宝石のような天使の姿が現れたら誰だって欲しくなる。

「ボクを争って戦争も起きたこともある。本物の天使と思ってね。でも、ボクは人間。ピネウマのせいでこんな姿になってしまった。満月の時だけ。そして、敦くん・キミ虎になってないね」

「あ!」

「こんな天使なんていう醜い姿の前で虎に変身できるかい? この姿を見た人間は1秒でも長くボクを見ていたいと思う。 それがキミの異能を抑えているのかな?」

「醜い!???その姿が?どこが??そんな天使みたいなのに!!」

「人殺しはどんな姿をしていようと、それは醜悪そのものなんだよ」

パラパラとダイヤモンドみたいな涙が粒になって彼の瞳から落ちて行く。

「中也さん、キミもピネウマ人間にするよ」

「?」

「ボクと一緒に贖罪をしよう」

中也は何にも言えない。ただ、このラグエルという人を自分の側に置きたい、そう考えはじめた。

「・・・わかった・・・その変わり、満月には必ずお前の姿が見たい」

ラグエルは少女のような笑みで。

「いいよ」

満月に黒い雲がかかり、光が途絶えた。

するとラグエルの姿はいつもの学者の姿になった。

「さ・研究室に戻ろう」

中也は屋上から階段を下りるとき、あの化け物みたいなレオンがどうしてこの人の言いなりになっているのか理解した。

そうして、初めて人を愛する・・・いや、言葉にできないラグエルにたいする執着心が彼の心を支配して行った。

「何て異能力だ・・・・あれにかなうものはこの世に存在しないだろう・・おそらく」